クアラルンプールの怪しい扉の先に──日本人ラウンジ「港区」潜入記

ホテルの4階でエレベーターを降りると、人通りの少ない薄暗い廊下が続いていました。

その先にあったのは、一見するとラウンジとは思えない無機質な扉。看板らしい看板もなく、初めて訪れる人であれば、本当にここで合っているのかと足を止めてしまうような雰囲気です。

インターフォンを押すと、ゆっくりと扉が開き、大柄な黒人スタッフが姿を現しました。もし事前に日本人向けのラウンジだと聞いていなければ、その場で引き返していたかもしれません。

しかし、その扉の向こうには、日本人が安心して楽しめる夜の空間が広がっていました。

目次

  1. 港区(ミナト)──クアラルンプールにある日本人ラウンジ
  2. たどり着くまでが試練
  3. 気づけば、盛り上がっていた
  4. 会計という名の衝撃──現地価格のはずが
  5. まとめ

港区(ミナト)──クアラルンプールにある日本人ラウンジ

「MINATO〜港区〜」は、マレーシア・クアラルンプールにある日本人向けラウンジです。

東京・港区をイメージした店名のとおり、日本人が安心して飲める空間をコンセプトに営業しており、現地に駐在するビジネスマンや旅行者から親しまれています。

イスラム文化の色が濃いマレーシアでは、日本のようなナイトカルチャーは決して一般的ではありません。その中で、日本語が飛び交い、日本式の接客を受けられるこの店は、日本人にとって一種のオアシスのような存在になっています。

特徴的なのは、在籍する女性の多くが日本人であることです。留学や就労ビザを取得して現地で生活しながら働く人もいれば、新しい環境に挑戦するためマレーシアへ渡ってきた人もいます。

同じ日本人でありながら、それぞれ異なる人生を歩み、海外で生活しているという背景も、この店ならではの魅力の一つでした。

たどり着くまでが試練

鉢嶺が最初に驚いたのは、店内ではなく入口でした。店が入っているのは、クアラルンプール市内の「ドーセットホテル」。外観だけ見れば、何の変哲もない都市型ホテルです。

エントランスをくぐり、1階ロビーへ。この時点では、まだごく普通のホテルの光景に見えます。

ホテルのエレベーターで4階まで上がり、静かな廊下を進んでいくと、ようやく一枚の扉が現れます。

しかし、その扉には華やかな看板も装飾もありません。本当に営業しているのか、不安になるほど控えめな入口です。

少し迷いながらインターフォンを押すと、扉が開き、大柄な黒人スタッフが迎えてくれました。

日本のラウンジやキャバクラではあまり見かけない光景だけに、一瞬だけ緊張が走ります。銀座で長く夜の世界に関わってきた鉢嶺でさえ、「少し身構えてしまった」というのが率直な感想でした。

ところが、一歩店内へ入ると空気は一変します。落ち着いた照明、日本語で交わされる会話、丁寧な接客。

入口とのギャップに驚くほど、日本式ラウンジそのものの雰囲気が広がっていました。海外にいることを忘れてしまうような、不思議な安心感があります。

気づけば、盛り上がっていた

もともとは、一杯だけ飲んで雰囲気を見て帰るつもりでした。海外で日本人向けのラウンジがどのようなものなのか、一度体験できれば十分だと考えていたからです。

しかし、その予定はすぐに崩れました。キャストたちと話を始めると、それぞれがマレーシアへ来た理由や現地での暮らしについて語ってくれます。

留学、仕事、新しい挑戦。

同じ日本人でも歩んできた道はさまざまで、その話を聞いているだけでも時間を忘れてしまいました。

海外だからこそ生まれる苦労や、日本では経験できない出来事。話題は尽きることがありません。

グラスが空けば自然と乾杯が重なり、写真を撮り、また会話が弾みます。

「もう一杯だけ。」

そう思っていたはずが、気が付けばセットは自動延長になっていました。楽しい時間は、いつも予定より早く過ぎていくものです。

そして、その楽しい時間には、それ相応の代償が待っていました。

会計という名の衝撃──現地価格のはずが

海外の日本人向けラウンジで気になるのは、やはり料金です。「物価が安い国だから、日本より少し安いのではないか。」そんなイメージを持つ人も少なくないかもしれません。

しかし、この店ではその感覚は通用しませんでした。

セット料金は500リンギット。自動延長となり2セット利用したため、セット料金だけで1,100リンギット(約44,000円)になりました。

さらに注文したのは、ウイスキー「響」のボトル。価格は1,850リンギット(約74,000円)。

チャームや割りものを含めるとオーダー料金は2,240リンギットとなり、サービスチャージ10%、売上税8%が加算されます。

そして最終的な支払額は――。

3,743.2リンギット。

日本円に換算すると、およそ15万円です。

マレーシアというと物価の安い国という印象がありますが、日本人向けの高級ラウンジになると話は別でした。「響」のボトルを入れた時点である程度は覚悟していたものの、最終的な数字を目にすると、さすがに少し驚かされます。

それでも、その時間が十分に楽しかったからこそ、「高かった」という印象だけでは終わらない夜になりました。

まとめ

ホテルの一角にある怪しい扉。その先に広がっていたのは、日本と変わらない温かい夜の空間でした。

海外だからこそ出会える人がいて、日本語だからこそ盛り上がる会話があります。入口だけを見れば少し勇気が必要な店ですが、一歩中へ入れば、日本人が安心して楽しめるラウンジでした。

そして、もう一つ実感したことがあります。夜の世界は国が変わっても、人との距離感や楽しさは大きく変わりません。変わるとすれば、最後に手渡される伝票の金額くらいでしょう。

異国の地で、日本の夜を味わう。そんな少し不思議で、記憶に残るクアラルンプールの一夜となりました。

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